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森へ行く道

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天空のお花畑を歩いた/ミヤマキリシマの咲く山へ [森へ行く道<47>]

一ヶ月の「MIYAZAKI神楽画帖-神楽を伝える村へ」展(由布院駅アートホールにて)が終わり、由布院から宮崎へ。
九重山群を越えて、久住から高千穂を経由して帰るルートを選んだ。初夏の山脈は「万緑」の形容がふさわしい。草原も樹林も山塊も緑一色である。
牧の戸峠を越えた地点で小休止。ミヤマキリシマの群落が見えたのだ。そういえば、通りすぎてきた飯田高原も牧の戸峠も広い駐車場は満車状態だった。ミヤマキリシマの開花期は、押しかける登山者で山も混雑する。私は誰もいない小さな空き地に車を停めて、道路わきの小道に立つ。山道の入り口に「猟師山」の看板がある。

目測で1キロ程度とみた山道は、登り始めるとコナラやカシワの大木が混生する急坂となり、たちまち息が切れた。道の半分ほど進んだと思われるところで、小さな群落を見つけ、簡単に撮影を済ませて引き返そうかと迷っていた時、ちょうど重装備の登山者が下って来たので、
――この上に群生地がありますか?
と訊ねると、その人は私をじろりと見て、少し軽蔑したような口ぶりで
――ひと山越えればありますがね。
と言った。
私はGパンにTシャツ、運動靴といった軽装である。その目つきが気に食わなかったので、私は、内心
――なにをっ!
と思い、一気に登坂にかかった。昔、山伏の峰入り修行に同行した時は、最初の二日間は青息吐息だったが、三日目からは山伏たちより先に歩いて、先達をあきれさせた経歴を持つ山人<やまびと>の末裔である、この程度の山道は我が庭のようなものだ、という風な小さな反発心が動いたのである。少し前まで、両肩の痛みと足腰の神経痛に悩まされていたことは忘れていた。

汗をかくこともなく、山頂に着いた。振り返ると、ミヤマキリシマの群落が配置された見事な景観があった。三股山と牧の戸峠が背景に控えた絶景である。

山道はさらに小高い山へと続いており、そこは見事なお花畑となっていた。しかも、今、ここには登山者は一人もいない。
南方に阿蘇五岳が座る。西への山道は、小国・筋湯・湧蓋山方面へと続いている。そこは里人が暮らす領域。この小道は、山岳を縦横に走る山道の交差する地点であり、古来、山人や修験者などが行き来した道だろう。追われた獣の逃走経路であり、それを待ち伏せる猟師の「マブシ」でもあっただろう。「猟師山」の由来がそれであろう。

聞こえるのは、遠いホトトギスの声とミツバチの微かな羽音。ここは天空のお花畑である。

​          ☆

森の蛍「ヒメボタル」が出る夕べ[森へ行く道<46>]

     ☆
森の夕暮れ時。
西の空を茜色に染めて、夕陽が落ちてゆく。...
上弦の月が出ている。
森が夕闇に包まれる頃、森の奥から、チカチカ、チカチカと光りながら漂い出てくる小さな点滅。
ヒメボタルである。今年は例年より少し発生が早いようだ。
     ☆
「森のホタル」と呼ばれるヒメボタルは、陸生のホタルで、日本では本州・四国・九州・屋久島にまで広く分布するという。
八重山地方には ヤエヤマヒメボタル.、石垣島にはイリオモテボタルがおり、南に連なる島々には多くの同種のホタルがいるらしい。水辺ではなく、森林地帯に棲息するため、人目にはつきにくくあまり知られてはいないが、世界的にみれば、陸生のホタルのほうが分布は多いのだという。
餌はカタツムリ類だという。この森にはカタツムリの仲間のキセル貝が大量発生することがある。これもヒメボタルの餌の一つなのだろう。キセル貝は、体長2センチほどの細く小さな陸生の巻貝で、森の朽木や落ち葉の下などで発見される。
このキセル貝は、熊や猪、鹿などを狩る猟師が「山オコゼ」と呼び、海のオコゼの代わりに山の神に捧げる地方があるという。山の神は女神で、醜貌であるゆえ、自分よりも醜いオコゼをみると上機嫌になり、獲物を授けてくれるのだという。だが、海のオコゼとキセル貝とは全然似ていない。ここにも一つ、山の不思議がある。
     ☆
「九州民俗仮面美術館」の中庭にまで出てくる奴がいる。仮面展示室にさまよいこみ、しばらく古い仮面の間を行き来していた冒険者もいる。梅雨入り前のほんのひととき、出現する幻想空間。

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