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アートプロジェクト九州

1980年代後半、「湯布院の町づくり運動」の中から誕生した由布院空想の森美術館(1986-2001)が核となり、同時期に「ゆふいんアートプロジェクト」が結成され、「町をミュージアム」と見立てた「アートフェスティバルゆふいん」が実行された。続いて列車ギャラリー「ゆふいんの森号」と駅舎を美術館として利用する「由布院駅アートホール」の運営が開始され「アートの町・湯布院」という評価が定着した。九州の山間の小さな温泉町が獲得した「文化による地域起こし」の成果であった。その後由布院空想の森美術館は一時閉館したが、個人美術館の普及、各地での地域美術展の普及と定着などは着実に進行し、いまやアート活動と地域計画の連携は地域創造の普遍的な手法として定着した。「伊豆高原アートフェスティバル」「越後妻有大地の芸術祭」「瀬戸内直島国際芸術祭」「徳島神山町アートの町」「大分・別府プロジェクト」など豊富な事例がそれを証明する。

 

2011年、東北地方を襲った大地震と大津波は未曾有の被害を発生させ、東電福島原発の事故という危機的状況を発生させた。このことは日本列島の上に大きな価値観の転換を促し、アーティストや子育て世代などの都会から地方への移住、自然と共生した生き方の模索などが始まった。それにともない、各地を訪れる「観光客」の質の変化も起こった。

 

宮崎の地では、国家創世の物語と土地の歴史を語り継ぐ「神楽」の伝承が注目され、古民家の再生・移住者の受け入れなどと連動しながら地域再生の企画が進行し始めた。

2018年5月、「由布院空想の森美術館」が由布院の地に17年ぶりに再開された。これを機に、かつて「ゆふいんアート」を牽引したスタッフ・仲間たちが集まり、30年前に結成されて一時代を拓く活動をした「由布院アートプロジェクト」を再編成し、新たな挑戦をすることで合意した。

これを機に、九州全域で展開されているアート活動とアーティストを連結し、新たな地域創造の運動体として連携する「アートプロジェクト九州」を設立する。

 

共同代表・高見乾司は、前記湯布院での活動を主宰・牽引し、宮崎に移転後は「石井記念友愛社」の「福祉と芸術が出会う理想郷づくり」の理念と共調する活動を展開しながら、「神楽」の伝承地に通い、「神楽と仮面」の調査・研究を続けてきた。

共同代表・中村哲朗は、トラジッションタウン「森の蘖(ひこばえ)」代表として、その活動は「天空カフェジール」「オーガニックフェスティバル宮崎」などと連動し、古民家の修復・再生なども手掛けながら手腕を発揮するアーティストとして活動してきた。高見の活動が一つの時代を開き、後継者や仲間がネットワークされ、中村の活動がそれを次の世代に引き継ぐ分厚い人脈を形成する。この実践家二人を中心に立ち上げられた「アートプロジェクト九州」は各地で活動を展開するアーティストと施設などの運動体を連結し、呼びかけ、時に応じて支援活動や共同のアート企画を実践し、実務体制を作りあげて次のプロジェクトの現場へ向かう。

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